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第5章顎関節症の治療

インプラント治療によって良く咬めるようになるはずが、天然歯と異なり弾力性がないため、少しでも噛み合わせが悪いと逆に顎関節症になることがあります。当院でも他の歯科医院でインプラントを入れてから咬み合せがおかしくなって顎関節症になったという患者さんも時々来院されて治療することがあります。

私は、松阪市民病院歯科口腔外科で顎機能専門外来担当医として約1200症例の顎関節症患者を治療してきた経験から、顎関節症についてもすこし説明したいと思います。

●顎関節症の症状と原因

いわゆる顎関節症の患者さんは最近、非常に多くなってきました。特に女性に多く、文献では4:1くらいの割合といわれていますが私の経験ではもっと多い気がします。この疾患の三大症状は顎の痛み、カクカクいう関節雑音、口が途中までしか開かない開口障害ですが、ときおり不定愁訴といって、頭痛、耳鳴り、肩こりなどの症状を伴うことがあります。

前述したように、噛み合わせが悪いこと(不正咬合)も重要な原因ですが、最近は生活習慣病という観点から捉えることも必要になってきました。

というのも、頬杖をしたり、うつ伏せで寝たりすることが多いと、顎を押し込めてしまうので良くありませんし、また学生に多いのですが、面を被る剣道やフルート、トランペットなどの管楽器を長時間吹いていると、同は様な理由で下顎の位置が奥へずれてしまって顎関節症になることがあります。

また、歯軋りだけでなくTCH(ToothContactHabit)といって、歯列接触癖が顎を動かす筋肉を過緊張させて顎や筋肉に痛みを発生させる原因にもなります。

尚、神経症的な傾向にある人はどうしても筋肉に持続的な過緊張を強いてしましやすいため顎関節や咀嚼筋の痛みが発症することも少なくありません。ただ、混同してはいけないのは仮面うつ病(maskeddepression)といって病気の本体はうつ病であるにもかかわらず、顎関節病のような症状がでるケースがありますが、この場合は心療内科でうつ病の治療をしなければ歯科医療では治療できません。

●顎関節症は正しい治療でほとんど治る

顎関節症は、その病態を正しく把握して適切な治療をすればほとんど治すことができます。また虫歯と違って自然に治癒することも少なくありません。安静にしていれば数日で症状が消えることもあります。

勿論、でたらめな咬合をそのままにしていたり、不良習癖をそのまま続けていたら治るものも治らないのは当然で、より悪化することもあります。

顎関節学会ではⅠ型からⅤ型に分類されていますが、適切な診断の基で、どの型に属し、原因をつきとめることが必要となります。

よくネットを見ると、誇大広告をした民間療法的な治療がありますが、あまりお勧めできません。

エビデンスに基づいた医学的治療が最も優先されなければならないと思います。

●顎関節症治療は健康保険で治療できる

私がなぜこのような当然かつ俗っぽいタイトルをつけたかというと、咬合治療と称して高額な自費治療料金を請求する歯科医院が少なからず存在するからなのです。

インプラントと違って、顎関節症治療における咬合調整やいろいろなスプリント治療、徒手円板整位術、これらは保険治療が認められています。ですから、顎関節治療は保険の範囲で治せると思ってください。

症状が消えた後、咬合再構成するために、充分なインフォームドコンセントの後、咬合再構成の自由診療治療をされることは患者さんの自由ですが、私の持論では、再発の危険性もありえますので、十分説明を聞かれて納得してからにしてください。

●全身の病気を咬合治療で改善できるとするのは邪道

そういう私も、20年ほど前は、咬合と全身症状との関連性に非常に興味がありました。頭痛の90%は咬み合せが原因だとか、咬合治療すれば、アトピーや喘息まで治るという「何でも来い」の民間学派の講演会にも参加したこともあります。

もちろん、結果として改善した症例も当然あるのですが、それはあたかも癌の民間療法のような効果しかないと思います。反対にそのような歯科医が、歯科治療した後、全身症状(不定愁訴)が出た場合、「そんなの咬合(歯科治療)とは関係ないですよ」と責任逃れを主張したら、これもまた一方的な話ではありませんか。

結論としていうならば、顎関節症治療や咬合治療の嬉しい副産物として、肩こり、頭痛、耳鳴りなどの不定愁訴がなくなることはあっても、それを目的に治療するのは邪道であるというのが私の結論です。

●顎関節症はこうやって治す(顎関節症の最新治療)

一般的に顎関節症の治療では、以前からスプリント(写真参照)が有効な治療法として定着していますが、私は最近、型や原因別に独自の治療チャートを作って治療を行っています。それをなるべく簡単に説明します。

1)顎の雑音(カクカク、ポキポキ)だけの症状

よほど大きな音で生活に支障をきたさないかぎり開口訓練と生活指導だけで治療はする必要ありません。

2)顎の痛みがある場合

その傷みが関節部なのか顎を動かす筋肉(咬筋)なのかによって分類して治療法を変えます。関節部のいたみであれば、安静、投薬、YAGレーザー照射が主な治療法になりますし、筋肉の過緊張によるものであれば生活習慣指導やTCH改善療法、最後にスプリント治療をおこないます。

3)顎が開かない(開口障害)の場合

このような症状の患者さんが一番多く来院されるのですが、これはまず顎関節が痛くて開きづらいのか、関節円板が前方に転位したため、引っかかって途中から開かないのか診断する必要があります。

有痛性の開口障害の場合は2)で説明したような治療法になりますが、引っかかって開かない場合は、マニュピレーション(徒手的円板整位術)といって顎が外れた場合とよく似た方法で顎の整体をすることで開けることが出来ます。

私は、これに呼吸法を併用して取り入れて改良を重ねてきましたので、現在、ひじょうに高い成功率を誇っています。

このような症例では、一般的なスプリント治療を行ってもほとんど無効なことが多いので注意する必要があります。